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 HOME > 野生動物 > ニホンザル > 和歌山タイワンザル意見書
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野生動物が生きられる環境を

和歌山県のタイワンザル問題について、
当会では以下の意見書を知事に送りました。


平成12(2000)年11月10日

和歌山県サル保護管理計画に対する意見書

 和歌山県知事
 木村 良樹  様

 和歌山県環境生活部長
 道浦 渥   様

1.対策の遅れに対する反省を

 すでに10年以上も前から、大池遊園にあった動物園のタイワンザルが逃げて野生化しつつあるという事実は、霊長類研究者たちも認識していた。その時点ならば、まだ個体数も少なく、捕獲も容易だったはずである。しかし、個体数が200頭近くまで増大し、農作物被害が発生するまで見過ごしてきた霊長類研究者達も、行政も怠慢ではないか。

 和歌山県では今年に至るまで、飼育下にある動物の飼養保管に関する条例が制定されていなかった。そのため、危険動物や展示動物の飼育者に対して県の行政が指導や監督を行わず、まったく無為無策で放置してきたことの責任は大きい。

 この12月1日より動物の飼養者の保護管理責任を定めた改正動物愛護法が施行される機会に、県条例において、外来野生動物の飼育・管理責任者に対しより厳しい規制をかけるべきである。さもなければ、また第二、第三の移入動物問題を発生させないという保証はない。

2.ニホンザルの保護に費用を

 県の計画では、在来のニホンザルを守るために外来のタイワンザルを根絶させるとしている。しかし、その本来守られるべきニホンザルについて、県はこれまでどのような保護管理対策を講じてきたのか。県では、この数年、毎年500〜600頭ものニホンザルを有害駆除している。しかし、被害の防除対策への助成金は平成11年度でわずか200万円程度にすぎない。  一方、このタイワンザル根絶対策には800万円もの予算を計上している。これでは、ニホンザルを守るためにタイワンザルを駆除するという理由はとうてい成り立たない。  まずは、在来のニホンザルの保護のために、サルの生態調査、電気柵の設置や追い払い方法等の防除対策を立て、それに見合う十分な予算を取るべきである。

3.捕獲個体の処分方法

 県の計画では、タイワンザルを全群捕獲し、これを「安楽死」処分にするとしている。動物実験に提供しないことは当然であるが、一方在来のニホンザルに対しては、なんら「安楽死」の処置が取られていないという矛盾がある。平成11年度に県が駆除したニホンザルは548頭で、そのうち40頭を溺死させ、6頭を撲殺している。また2頭を和歌山県立医科大学に動物実験用に提供している。

 野生のサルを生きて捕獲した場合は、捕獲許可した者(行政)が占有していると考えられ、溺死、撲殺などの動物に苦しみを与える致死方法は、明らかに動物保護管理法(改正動物愛護管理法)に違反している。医大に譲渡した後も、医大が鳥獣保護法13条による飼養許可を得ているかどうかさえ確認していない有り様である。

 この機会に、ニホンザルの有害駆除個体に対しても、まず最初に捕獲個体の保護収容先に関する検討を公に行い、どうしてやむを得ない場合に限り、捕獲現場において苦痛を与えない方法による速やかな致死方法を取ることを定めるべきである。

4.まず被害防除対策を

 県の計画では、移入動物としてのタイワンザルの根絶が主目的となっているが、もしタイワンザルによる農作物被害が発生しなければ、果たしてこれほどの予算を投じる計画が立てられただろうか。また、タイワンザルが根絶されたあとにニホンザルの群が入って来て農作物の食害が起こった場合、再び根絶せよという被害住民の圧力に、行政はどう対処できるのだろうか。

 タイワンザルは移入動物だから根絶させるという前に、県として、野生動物との共存と生物多様性を維持するためにはこれだけの施策が必要であるという基本方針を示すべきである。はじめに被害防除対策に取り組む姿勢がなければ、このタイワンザルの根絶計画は、何の教訓も残さない単なる大量殺戮として終わるだけである。

5.事件の教訓化と環境教育の必要性

 今回の計画では、県民に対して目の前の有害なサルは理由を付けて根絶させてもよいという意識を普及させるおそれが大きく、環境教育の観点からも問題である。野生動物による被害は、自然災害の一部であって、人間の側にもこれを防ぐための知恵と努力が求められる。

 野生動物の被害を根絶させるためには、種を絶滅させるしかない。しかし、我々現代人の勝手で特定の種を絶滅させることは、次の世代や生物多様性と自然環境に対する犯罪行為に等しく、許されない。

 野生動物との共存は、単なる美辞麗句ではなく、それだけの労力と資金を必要とする行為であり、人間の側にも努力と自己抑制が求められる行為であることを、この機会に広く県内外の人々が学び教訓化させていくことが必要と考える。

以  上

地球生物会議(ALIVE)

 


 
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