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【アメリカで動物保護法を学ぶ】

ロースクールの動物法講義に参加して

Dog in Class

  ALIVE No.49 2003.3-4 高橋満彦


 「なぜ動物は物であり、人の財産なの?」
 「法は犬の保護に厚く、ネコには冷たい? ほかの動物は?」
 「動物虐待は児童虐待に共通性がある」、「どの州法が一番、このような虐待事例を取り締まるのに適しているか」
 「ネグレクト事例を摘発するのにはどのような証拠が必要か?」
 「動物は訴訟を起こせるか? あるいは誰が代弁できるの?」

 これらは、私のロースクールで開講されている動物法(アニマル・ロー)の講義で議論したことの一部です。  アニマル・ローとは、ただの動物に関する法律ではなく、動物保護の観点に立った法の分野です。全米で現在、約18のロースクールで開講されているといわれています。アメリカ中のロースクールの数(200以上)からすればごく一部ですが、リベラルな学風の学校を中心に広がっています。私が留学している西海岸オレゴン州のルイス・アンド・クラークは、リベラルな学風(元ヒッピーの教授とか)と環境法で有名ですが、アニマル・ローの草分けでもあるのです。

 アニマル・ローの講義は、昨年来日されたファーブル教授が理事を務めるAnimal Legal Defense Fund (動物保護法律基金、ALDF)の弁護士が2名で担当しています。

 
 教科書は基金の活動家(弁護士さん)が編集した784ページのその名も、「Animal Law」。この電話帳のような教科書には米国中の動物保護に関する判例が満載されています。内容は、・動物の定義、・動物は物か?・動物虐待防止、・闘鶏、・狩猟、・ペットと不動産、・損害賠償……そして動物への遺言まで多岐にわたっています。

 クラスの学生たちは、判例を研究しながら、「犬は単なる物であり、その滅失に対する精神的損害は認められない」という判決には憤慨し、逆に「人類最大の友(犬)の価値は市場価格うんぬんではない。犬は齢を経るごとにいとおしくなる。ペットロスの悲しみを法は認める」とする判決に喝采し、どうしたら動物虐待犯を摘発できるか、地元の条例の問題点は何か、などなど熱く議論しています。

 アメリカの動物保護に関する法律は、日本よりは進んでいるものの、世界有数の牧畜国であるということもあり、西ヨーロッパには後れを取っています。また、広い国土で地域によって社会風土も大きく異なるのですが、連邦制度といい、州ごとに法律も異なります。そのため、東海岸の北部や西海岸の州では、動物保護に理解があるのに、南部や特に牧畜業が強い西部では規制が弱く、あっても実行されないという問題を抱えています。
 法律の実行(執行)という点では、一部の州などでは、動物愛護協会が動物虐待の警察権を持っています。ここオレゴン州でも、協会の職員が特別警察官に任命されていますが、武装しておらず、凶悪な事件は警察に任せています。しかし、一般の警察官の動物保護に対する意識は高くありません。犯罪発生率が高い国(日本の皆さんが考えるほど無法な国じゃありませんが・・・)のうえに、どこも緊縮財政なのでしょうがないのです。ちなみに、特別警察官の給料は動物愛護協会から出ています。

 ところで、一緒に受講している12名のクラスメートたちのバックグラウンドは半数以上がベジタリアンで、ロースクールの動物保護団体の会員です。この団体は、Student Animal Legal Defense Fund (SALDF)といいます。また、このロースクールはAnimal Lawという世界唯一の動物保護に関する法律専門誌を刊行しており、この編集が学生たちに任されています。この編集委員会で活動している学生もいます。

 学生たちは卒業後、全員が弁護士になるのですが、将来、動物保護の弁護士になることを希望している人もいます。そのため、講義はアニマル・ライツの理論や哲学だけではなく、かなり実践的な部分をカバーします。たとえば、ペットの誘拐、獣医の医療過誤、離婚時のペットの「親権」など、弁護士になって実社会で取り扱う事例に配慮がされています。

 弁護士になる前から、すでに何人かの学生は、地元の動物に関する事件を扱う法律事務所の補助員や、ALDFの調査などのアルバイトをこなしています。学校の組織に動物法センターというのがあり、斡旋してくれるのです。

 学内の動物法センターはSALDFと共同で、毎年、動物法シンポジュームも開催します。シンポジュームは、州弁護士会の生涯学習の一部にも認定されており、今年は全米や外国からの講演者も交え、最先端の討論が提供されました。日本でも司法改革、ロースクール構想ということで、数年後には法曹教育が大きく変わるので、こういった柔軟な取り組みを参考にしてほしいものです。

 最後に、私のアニマル・ロー受講の最大の収穫は、「冷たい法律」を扱うときでも、かわいそうだ、ひどい、という感情に素直であっていい、ということを学んだことかもしれません。

参考: Lewis & Clark Law School 動物法センター 
URL http://www.lclark.edu/LAW/


 
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