イルカ介在療法の禁止を求める

ALIVE海外ニュース 2008.1-2　翻訳：宮路

クジラ・イルカ保全協会(WDCS)は、イルカ介在療法(DAT)には効果がなく、人にも動物にも有害となる可能性があるとして、DAT の完全な禁止を求める声明を発表した。

DATは賛否両論を呼んでいる療法で、イルカと至近で関わる−通常、人間の飼養下にある、あるいは自然な環境にいるイルカ と共に泳ぐという方法をとるーもので、病気や障害に対する治療や一時療法として促進されている。しかし、「あなたはDAT を信じられますか」と題されたWDCSの新しい報告書は、急速に
拡大するDAT産業の背後にあるショッキングな真実を暴露している。

WDCSは、リサーチ・オーティズム（自閉症研究）という健康促進団体の支援を受け、DATに関する調査を行い、以下のことを発見し、DATの完全な禁止を求めている。

◎この療法が効果的であることを証明する科学的な証拠は何もない。

◎産業を規制する公的な基準が何もない。

◎増えるDAT施設に供給するためにイルカが野生から捕獲されているが、これは保全の面でも動物福祉の面でも深刻な問題を含んでいる。

◎DAT参加中、人も動物も感染や負傷の危険にさらされる。

◎療法が成果があったという証拠が不十分であるにもかかわらず、DATは非常に費用がかかる。もっと低費用で受けやすい療法が他にある。

リサーチ・オーティズムのリチャード・ミルズもこの調査結果に同意し、次のように述べている。 「リサーチ・オーティズムは、イルカ介在療法が自閉症の人々を支援するという証拠が全くないという事実を明らかにしたWDCSのレポートを支持しています。DATは非常に費用がかかり、自閉症患者、イルカの双方に有害である可能性があると考えています。　また、この療法の効果を裏付ける良質の研究は存在せず、したがってリサーチ・オーティズムとしては、この療法を取り入れる際には、くれぐれも慎重に検討していただきたいと思います」

報告書作成者のひとり、キャシー・ウィリアムソンは以下のように述べている。

「DATが療法を受ける人に長期的に有効であるという科学的な証拠はなく、かつ、療法を受けたい人も、（ときには「サービス」を提供するために野生から捕獲され）人間の飼養下に置かれるイルカも共に高い代価を支払わなければなりません。この産業についての調査を行い、DATを全面的に禁止するしかない
という結論に達しました」

「この療法は、無防備な人を対象に行い、また、イルカを搾取します。そのイルカは、野生動物にはまったく不適切な状態で人との関わりを無理強いされます。イルカを人間の飼養下に置くことは、イルカにとって野性より短い平均寿命などといった深刻な福祉問題を含みます。DAT産業によって、ますます多くの動物が飼養下に置かれるようになるのは残念なことです」

野生からイルカを捕獲する作業は、イルカを船で「囲い込んだり」、ネットで捕らえたりして行われ、イルカに信じられないほどのストレスを与える。このような目に会って多くのイルカが命を落とし、捕獲後、他の施設に移されたものは本来の寿命より短い年数しか生きることができない。

この報告書のコピーと添付リーフレットはhttp://www.wdcs.org で見ることができる。

イルカ取引について: 今月、ソロモン諸島から２８頭のイルカがドバイに輸出されたが、このうちの何頭かがDATの提供を計画する施設で使用されていることが最近、報告された。WDCSは、このよう輸出は貿易法違反だったと信ずるが、それにもかかわらず許可された。

２００７年１０月２９日
Newswise
http://www.newswise.com/articles/view/534876/?sc=swtn